九州に住む中国人を狙った偽電話詐欺が相次いでいる。中国語で現地警察などを名乗り「事件に関わった疑いがあり、誤解を解くにはお金が必要」とだます手口だ。福岡県警などによると、現金をだまし取られた被害が6月に3件、未遂2件が判明。専門家は「中国国内で横行した偽電話詐欺の犯人グループが取り締まり強化を受け、日本在住者に矛先を向けた可能性がある」としており、関係機関も警戒を強めている。

「あなたと詐欺グループとの関与を調べるので帰国せよ。できなければ保証金を払え」。6月4日、九州大大学院に留学中の中国人女性(31)の携帯電話に、中国の入国管理局や上海警察をかたる男女からの電話が10回もかかった。滑らかな中国語で話し、中国の国番号「+86」が表示されたこともあった。女性は5日、日本の銀行に4回にわたり計43万円を振り込んだ。県警によると、県内で中国人が偽電話詐欺被害に遭うのは初めてで、全国的にも珍しいという。

 県内で働く30代の中国人女性は同月7日、中国大使館職員をかたる電話で「あなたの口座が事件に関係している。お金を払わなければ強制帰国になる」と言われ、15万円をだまし取られた。熊本大によると、同大でも中国人留学生が同様の被害に遭ったという。

偽電話詐欺は中国で「電信詐欺」と呼ばれ、日本と同じく社会問題になっている。一橋大大学院法学研究科の王雲海教授(刑事法)によると、警察や大使館をかたる偽電話詐欺は昨年春ごろに多かったが、中国国内の厳罰化もあり昨年末には下火に。このため「中国で通用しなくなり、警戒心の薄い日本在住者を標的にしたのでは」とみる。

 「一般的に偽電話詐欺は手法がまねされやすく、広まりやすい犯罪」と語るのは、福岡大人文学部の大上渉教授(犯罪心理学)。留学生など、日本に住む外国人は増え続けており「今後、外国人の被害者の増加が想定される」と警告する。

 九州大大学院の留学生が被害に遭った冒頭の事件では、犯人側から中国の無料通信アプリ「QQ」で留学生本人の顔写真が携帯に送られてきており、ピンポイントで狙われた恐れがあるという。このため九州大は英中韓の3カ国語による注意喚起のチラシを作り、留学生向けの掲示板などに張り出した。佐賀大も中国人留学生に一斉メールで警戒するよう連絡。九州・山口・沖縄地区の中国人留学生でつくる団体「九州地区中国学友会」は、無料通信アプリで事件を知らせた。駐福岡中国総領事館は「中国の公的機関が電話で個人情報を聞いたり、送金を求めたりすることは絶対にない。そのような電話を受けたときは注意してほしい」としている。

出典:西日本新聞(2019/7/8)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/525146/