税金や医療費の還付があると偽って現金をだまし取る「還付金詐欺」が愛知県で再び増えている。70歳以上のATMでの振り込みを制限する「0円設定」を県内の全ての信用金庫が導入し、いったんは被害が減ったが、今度は60代を狙った犯行が急増した。信金は制限の対象年齢を65歳に引き下げ、被害を食い止めようとしている。

名古屋市中区の愛知信用金庫本店はATMのすぐ横に65歳以上の振り込みの制限を知らせる貼り紙を掲げた。3年以上キャッシュカードで振り込みをしていない口座はATMの振り込み上限額が「0円」となり窓口でしか手続きができなくなる。これまでは70歳以上の顧客が対象だったが、65歳以上に引き下げた。

愛知信金の口座を持つ女性(66)は「急な送金が必要になった時は困ることもあるかもしれないけど……」と不安を口にしつつ、「絶対に詐欺被害に遭わない自信はない。金融機関が守ってくれるならいいことだと思う」と理解を示す。

こうした被害防止策は「0円設定」と呼ばれる。2016年に岡崎信用金庫(愛知県岡崎市)が70歳以上を対象に全国で初めて導入した。その後県内15の信金すべてに広がった。全国でも信金を中心に取り入れる金融機関が増えつつある。

当初は効果的だった。16年に351件(被害総額約4億7千万円)だった愛知県内の還付金詐欺は、翌17年には52件(同約5300万円)に急減した。だが、18年は147件(同約1億5千万円)と再び増加に転じ、19年も5月末時点で前年同期の3倍を超える被害件数が出ている。

「0円設定の対象外だった60代が狙い撃ちにされている」と捜査幹部は指摘する。被害者に占める60代後半の割合は16年は約13%だったが、18年は約40%まで増えた。詐欺グループが年齢を把握できる名簿を入手し、70代を避けて犯行を繰り返しているとみられる。

事態を重くみた県警は県信用金庫協会に協力を要請し、県内すべての信金が6月1日までに順次、対象年齢を65歳以上とした。

愛知信金業務部の野村隆継副部長は「顧客の資産を守ることが最優先だと判断した」と狙いを説明する。ただ、「60代後半は現役で働いている人も多い。顧客へのサービスを後退させることでもあり、非常に悩ましかった」と難しさも語る。

大手銀行の担当者は一定の条件で振り込み制限などを講じているとした上で、「全国の顧客に及ぶ影響の大きさを考えると、慎重にならざるを得ない。詐欺被害の防止策は引き続き検討していく」と話す。

県警生活安全総務課の中川裕文次長は「0円設定は還付金詐欺対策の切り札。対策が広がるよう引き続き協力を呼びかけたい」と強調している。