年が明け、県内で高齢者を狙うニセ電話詐欺の被害が後を絶たない。三十日までに二十九件(前年同期比十四件増)と、ほぼ倍増。実質的な被害額も四千五百四十万円(前年同期比二千八百二十五万円増)に上る。被害を食い止めようと、県警は三十一日、「サギ電話」の音声データをホームページに公開した。
「おはよう。きょう行くけど家いる? 大丈夫?」。音声は一月、県西部の七十代女性宅に孫をかたる男から実際にかかってきた電話だ。四回ほどに分けてかかってきた。不審に思った女性は家族に相談し、被害には至らなかった。
動画は「導入編」「トラブル発生編」「困り事打ち明け編」「金銭要求編(1)(2)」の五部構成で、それぞれ一~二分にまとめた。
孫を装う男は、のどの診察で寄った病院で書類や小切手の入ったかばんをなくしたと泣きつく。孫の上司をかたる男も登場し、「本日中に三百万円を用意してほしい」と話す。
県警生活安全企画課の担当者は「間違いなく台本があり、そのとおりに話を進めている。女性の心理を揺さぶって、信用させようとしている」と分析する。
孫をなんとか助けたいという気持ちを悪用。上司への罪悪感を増長させて、現金を用意するよう導く。女性のうなずきは、徐々に心配調となっていった。
同課によると、二〇二〇年に入ってからのサギ電の認知件数は二百四十九件(前年同期比九十四件増)。昨年末から、古典的な「オレオレ詐欺」に回帰する傾向にあり、警察官や孫、息子など親族を名乗る手口が七割以上を占める。
今回公開されたデータでは、女性が電話機に録音装置を付けていた。同課の坂田幸隆次席は「留守番電話の設定や迷惑・悪質電話防止装置の設置など、とにかく電話を受けない対策を」と訴える。
(谷口武)
https://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20200201/CK2020020102000012.html