県警は、ニセ電話詐欺の疑いがある不審電話が集中している地域の各家庭に、電話で注意を呼び掛ける活動を続けている。未然に詐欺被害を防いだケースもあり、後を絶たない詐欺被害の抑止に一役買っている。 (土屋晴康)

 「警察官を装った不審な電話がかかっています。詐欺の可能性があるので注意してください」。川崎市内のビルに設置された「特殊詐欺等被害防止コールセンター」では、県警から業務委託を受けた会社のオペレーター約十五人が次から次に電話をかけ、高齢者らに詐欺への注意を呼び掛けた。

 ニセ電話詐欺では、金やキャッシュカードを受け取る「受け子」を事前に待たせておいて、その地域の固定電話に集中的に電話をかけるケースが多い。県警が県民からの通報で得た、電話が集中する地域や時間帯、手口などの情報を素早くコールセンターに伝えることで、発見から数十分後には、オペレーターたちが地域に電話をかけられるようになる。

 不審な電話を受けた直後の高齢者に電話がつながれば、オペレーターは不審電話の内容、どんな状況にあるのかを聞き取り、高齢者に代わって、県警に通報。詐欺防止に協力する金融機関やコンビニ、タクシー事業者などにも電話をかけ、高齢者らへの積極的な声掛けを依頼する。コールセンターからの電話で昨年度、十四件の詐欺被害を防ぐことができた。

 県警は二〇一〇年度から、電話による注意喚起を続けているが、認知度はいまひとつ。コールセンターからの電話を不審な電話と勘違いして、県警に問い合わせる人もおり、発信先に通知されるコールセンターの電話番号「044(982)1876」を電話機に登録してもらうなど、周知を図っていきたい考えだ。

 県内の二月末時点のニセ電話詐欺の被害は三百十一件(前年同期比七十五件減)、三億四千二百万円(同四億三千百万円減)。減少しているが、いまだに被害はなくならない。

 県警犯罪抑止対策室の担当者は「詐欺被害にはタイムリーな情報発信が大事。高齢者に直接注意喚起できるのは効果的で、協力企業と連携しながら、一件でも詐欺被害を減らしたい」と話している。

出典:東京新聞(2020/4/5)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/202004/CK2020040502000132.html