注文したはずのないマスクが届けられたり、「コロナに効く薬を買わないか」と勧誘されたり…。新型コロナウイルスの感染拡大に便乗した悪質商法や詐欺と疑われる不審電話が県内で横行している。感染拡大が長期化すれば被害が増える恐れがあるとして県や県警が注意を呼び掛けている。

 「高額な請求が来ないか心配なんですが…」。感染者が県内で急増した四月中旬、消費生活センターに六十代女性から電話が入った。女性宅には注文したはずのないマスク五十枚が突然届けられた。差出人は不明。どこを探しても値段の記載がない。不安を覚えての相談だった。「業者から引き取りがないまま十四日間を経過すれば、処分しても構わない」と相談員が説明すると、女性は安心した様子で電話を切った。

 こうした手口は注文していない商品を送り付けた後に高額な代金が請求される「送り付け商法」と言われている。マスクの品薄に便乗した悪質商法の一つで全国的にも増加の一途をたどる。県警生活安全企画課によると、県内では飯田署、大町署など九署の管内で四月から五月にかけて少なくとも十一件の相談が寄せられた。

 実際の被害はまだ確認されていないが、身に覚えのない物が送り付けられたらどう対処すればいいのか-。

 県くらし安全・消費生活課の担当者は「届く前に業者からの連絡がなければ売買契約は成立していない。特定商取引法では届いた日を起点に十四日が経過すれば自由に処分してもよいと規定されています」とアドバイスする。その後は商品の引き取りに応じる必要も自分から連絡する必要もない。

 万一、売買契約の締結を申し込んでしまったら-。「商品が届けられても契約書面を受け取ってから八日以内であればクーリングオフで契約は解除できます」と担当者。慌てて連絡せずにまずは冷静に対処することが重要なようだ。

 送り付け商法以外にも不安な心理に付け入る不審な電話も確認されている。県警に四月末までに寄せられた相談は送り付け商法の関係も含めて約二十件。保健所の職員をかたって「感染症への効果が期待される治療薬の『アビガン』を三万円で買いませんか」といった電話や、「新型コロナウイルス給付金アンケート」と偽って自動音声で個人情報を聞き出す電話など手口はさまざまだ。

 県警生活安全企画課の担当者は「個人情報を聞き出され、別の犯罪に悪用される恐れもある。個人情報は絶対に伝えず、不審に思ったらすぐに警察に相談してほしい」と注意を促している。

出典:中日新聞(2020/5/17)
https://www.chunichi.co.jp/article/nagano/20200517/CK2020051702000044.html