プリペイド式電子マネーを悪用した架空料金請求詐欺が相次いでいる。携帯電話のショートメッセージなどに反応して電話で問い合わせたら最後、数日で多額をだまし取られる手口で、近年は若者も狙われる。被害者自身も、また電子マネーを販売するコンビニエンスストア側も「詐欺に遭うのは高齢者」との先入観があり、水際対策は乏しいという。【塩月由香】
「限りなくクロ」。宮崎県警日南署を訪れた同県日南市内の20代社会人女性は、捜査員からそう聞き泣き崩れた。3日間で電子マネー100万円分を購入し、支払った翌日だった。
6月上旬の平日昼、メッセージが届いた。「利用料金の確認が取れていません」。思い当たる節はなかったが不安に思い、終業後、記載の電話番号にかけた。会社名は大手企業関連に見えた。「このままでは裁判に」と男が説明を始めた。サイト登録料だという未納額は電子マネー30万円分。言葉は丁寧だが「知人や家族に相談しないで」「インターネットで調べないで」。
電話を切るすきはなかった。「一旦払えば後で戻る」と押し切られ、コンビニ2店で30万円分の電子マネーを購入。電子マネーを引き出せるID番号を教え、やっと切ることができた。翌日、別の男から「他にも未納のサイト登録料がある」。同様に50万円分を買わされ、「携帯が乗っ取られているかも」とも。更に別の男からの電話で、携帯の保険加入代金として20万円分をだまし取られた。 行動の際、「詐欺注意」の張り紙を見て「詐欺ではないですよね?」と尋ねた。だが否定され、後は指示されるがまま。現金がないと言えば消費者金融に行くよう促され、被害額の大半を借りた。
捜査員は嘆く。「最初に署に相談してくれれば」「電話を切ってくれれば」「店員が止めてくれたら」――。
振り込め詐欺は銀行の守りが厳しくなり、受け子詐欺も逮捕者が続出。一方、電子マネー詐欺は犯人の手がかりは通話歴くらいだ。
国民生活センターは2015年ごろからホームページで注意喚起を始め、岐阜県警は16年、携帯電話で話しながら購入しようとする客がいれば通報を呼び掛ける、コンビニ向けの「電子マネー通報」を開始。兵庫県警は詐欺犯の音声を公開し、宮崎県警も今年3月までに、県内主要コンビニに電子マネー購入時に商品を入れて渡せる注意喚起袋を2万8000枚配ったが、被害は減らない。同県内では4月以降、被害が4件確認され、20代と40代の被害者も各1人いた。県警幹部は「県間移動制限で受け子を地方に送り込めない分、非対面型に犯人グループが注力しているのではないか」とコロナウイルスの問題の影響も指摘する。
日南署は若者も被害に遭うことを知ってもらおうと近く訓練をする。「高額の電子マネーを購入する人を見かけたら、年齢にかかわらず止めてほしい」。署員は力を込める。
◇ことば「プリペイド式電子マネー」 インターネットで音楽、ゲーム、書籍などを購入する際に使える「お金」。プリペイドカードは1500~5万円のものが主流で、コンビニなどで広く販売されている。購入時に付与されたIDを入力すれば、誰でも簡単に使えるため、だまし取られるケースが多発。被害直後に当局に連絡すれば引き出しを防げることもある。
出典:Yahooニュース(2020/6/29)
https://news.yahoo.co.jp/articles/6fd1ec6664d5481afd0297ed0418fe6b3e70203d