SMS(ショートメッセージサービス)による本人確認「SMS認証」を不正に行って取得された通話アプリが、少なくとも3件の特殊詐欺に使われ、約300万円の被害が出ていたことが捜査関係者への取材で判明した。通話アプリは法律による本人確認の義務がない「IP電話」で、SMS認証が不正に行われると利用者の特定が難しくなる。埼玉県警が捜査を進めており、認証代行が特殊詐欺の温床になっている実態が浮き彫りになった。

 捜査関係者によると、県警は29日、栃木県大田原市の無職の男性容疑者(20)=事件当時19歳=を私電磁的記録不正作出・同供用容疑で再逮捕した。再逮捕容疑は2019年9月19日、氏名不詳の第三者に通話アプリのアカウント取得に必要な携帯電話番号を教えた上、この番号にSMSで送られてきた認証コードを提供し、不正にアプリを使用できるようにしたとしている。同様の代行を計2回行い、1回につき代行料金として約1000円を受け取ったとみられる。  通話アプリを取得すれば、インターネット回線を使ったIP電話をスマートフォンからかけることができる。捜査関係者によると、不正に取得された番号は県内で3件の特殊詐欺に使われ、被害は約300万円に上った。

 容疑者は、別の第三者に電子決済アプリのアカウントを不正に取得させたとして同容疑で9日に逮捕されていた。ツイッター上には数百円から数千円程度で代行を引き受ける投稿が散見され、この容疑者以外にも不正が幅広く行われている可能性が高い。

 特殊詐欺事件ではプリペイド式の携帯電話などが悪用されてきたが、06年に全面施行された携帯電話不正利用防止法によって本人確認が厳格化され、最近はIP電話が使われるケースが目立つ。埼玉県警によると、19年に県警が把握した特殊詐欺で使われた電話番号のうち、約6割がIP電話だった。IP電話については法律による本人確認の義務はなく、通信会社の自主的な取り組みでSMS認証などが行われている。  県警は、特殊詐欺グループが身元を隠して電話番号を入手するために認証代行を利用していたとみて調べる。

出典:Yahooニュース(2020/7/29)
https://news.yahoo.co.jp/articles/6fd213536cbfb898986d0008212a1850145df257