愛知県内で2020年1~5月に摘発された特殊詐欺の実行役のうち、SNS(交流サイト)の勧誘をきっかけに加担した若者らが45%を占めることが県警への取材でわかった。県警は実行役を募るSNSの投稿に返信する取り組みを進め、8割が削除されたことも明らかにした。
「お仕事紹介します。 #受け出し #闇バイト #高収入」。短文投稿サイト「ツイッター」には特殊詐欺の実行役を募集する投稿が目立つ。主な役割は、被害者に電話をかける「かけ子」や、現金やキャッシュカードを受け取る「受け子」など。県警が1~5月に摘発した60人のうち、27人(45%)がこうしたSNS上の勧誘をきっかけに加担していた。そのうち5割近くが10~20代の若者だった。
アルバイト感覚で特殊詐欺グループに取り込まれるのを防ごうと、県警は2019年8月、ツイッターの公式アカウントで警告を返信する全国初の取り組みを始めた。
「このツイートは詐欺の実行犯を募集する書き込みです」「詐欺罪は10年以下の懲役です」。20年7月末までの1年間に2202件の警告メッセージを発信し、8割の投稿が削除された。捜査幹部は「一定の効果が出ている」と強調する。
勧誘ツイートに返信する取り組みは大阪や茨城、北海道など各地の警察でも広がりつつある。ただ、捜査関係者によると、1年前と比べて直接的な表現の投稿が減り、警察の監視をかいくぐる傾向がみられる。「受け子」などわかりやすい表現を避け、「闇バイト」や「UD」(受け子・出し子の隠語)といった言葉が目立つようになった。
実行役をやめたくても、特殊詐欺グループに個人情報を握られ、「逃げたらどうなるか分かっているな」と脅される例もあるという。愛知県警生活安全総務課の木村紀夫次長は「新型コロナウイルスの影響でアルバイトができず、手を出してしまう可能性がある。一度誘いに乗ると、抜け出せなくなる」と懸念する。今後もサイバーパトロールやツイッターへの返信を強化していく方針だ。
出典:日本経済新聞(2020/8/20)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62798600Z10C20A8CN8000/