10人超被害か…
「ひったくりに遭ったのでお金を貸してほしい」。そんなうそを言って相手の善意につけ込み現金をだまし取る「寸借詐欺」をしたとして、福岡県警博多署が今月、詐欺容疑で男2人を相次いで逮捕した。捜査関係者によると、2人は調べに「だましやすそうな若い人を選んで声を掛けた」。署は、主に若年層を狙って犯行を繰り返していたとみている。
「天神(福岡市中央区)に出掛けたらひったくりに遭い、財布や携帯電話、身分証入りのバッグを盗まれた。(自宅がある同市西区)姪の浜までの交通費と、(宿泊する)ホテル代を貸してほしい」
署によると、同市の会社員の男性(30)は8月中旬の夜、同市博多区の路上で男(33)=住所不定=から声を掛けられた。困っている様子を見かねた男性は、JR博多駅前のホテルまで案内した後、1万円を手渡し、連絡先を伝えて男と別れた。
男性は翌日、男が被害に遭ったというひったくりのニュースをインターネットで探したが、見当たらなかった。その代わり、同じ文言で現金をだまし取られたと訴える書き込みを発見。ホテルに問い合わせて男が宿泊していなかったことが分かり、署に被害を届け出た。
署は今月16日、男を逮捕した。男は調べに「みんな親切だった」などと話し、同様の手口で10人以上から現金をだまし取ったことを認めているという。
15日にも署は別の男(68)=住所不定=を逮捕した。逮捕容疑は6月末、同市博多区の博多バスターミナルで専門学校生の男性(18)に「大分に帰るお金がない。お金を貸して」などとうそを言い、5千円をだまし取った疑い。この日、男に2度「お金を貸して」と声を掛けられた男性が不審に思い、通報。男は既に現金をだまし取った相手だと忘れていたという。署は余罪があるとみている。
署によると、寸借詐欺に関する相談は以前から多く、被害に遭うのは主に学生などの若者。被害に気付かない本人を心配した親族が警察に相談するケースもあるという。捜査幹部は「本当に困っている人もいるだろうし、お金を貸さないでと呼び掛けるわけにもいかない。善意につけ込む卑劣な手口だ」と憤る。
出典:西日本新聞(2020/9/30)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/649560/