若者の善意につけ込む

 福岡市中心部で困ったふりをして借りた金をだまし取る「寸借詐欺」の被害が相次いでいる。博多署と中央署によると10~20代の若者が狙われやすく、7月以降、両署には計数十件の被害相談が寄せられた。両署は善意につけ込んだ悪質な犯罪として警戒する。

 「熊本から来たが、新幹線にバッグとキャリーケースを忘れた」「財布のお金が取られていたら帰れない。ホテル代や食事、交通費として5万1000円を貸してほしい」

 9月13日夜、福岡市中央区天神2の路上で同市のアルバイトの少女(18)が突然、男性から声をかけられた。困った様子を見て、少女は現金自動受払機(ATM)で引き出すなどし、現金5万1000円を男性に渡した。

 男性は紙に名前と携帯電話の番号を書いて渡したが、数日後、少女が電話すると見知らぬ人にかかり、被害が発覚。中央署は10月21日、住居不定、無職の男性(21)を詐欺容疑で逮捕した。

同じ学生に声かけ逮捕も

 同様の被害は博多区でも。博多バスターミナルでは6月末、筑紫野市の男子学生(18)が「大分に帰る金がない」などと声をかけてきた男性に5000円をだまし取られた。約2カ月半後、学生がバスターミナルを訪れると、再び同じ男性から声をかけられ、不審に思い警察に通報。博多署は9月、住居不定の無職男性(68)を詐欺容疑で逮捕した。男性は「だました相手と忘れていた」と容疑を認めたという。

 博多署は7月以降、他にも1人を寸借詐欺の疑いで逮捕した。若者の被害が相次いでいることに、同署は「若者の方があまり人を疑わないためではないか」と推察し、注意を呼びかけている。

出典:毎日新聞(2020/11/1)
https://mainichi.jp/articles/20201101/k00/00m/040/015000c