特殊詐欺の詐取金を自宅などからインターネットバンキングで振り込ませる手口が2023年、東京都内で前年比5倍超に急増したことが11日、捜査関係者への取材で分かった。

 周囲が気が付きにくく、繰り返し送金してしまうため、被害は高額化。詐取金を受け取る「受け子」を用意する必要もないため、詐欺集団の間で急速に手口が浸透しているとみられる。

 「医療費の還付金があります」。東京都内の80代女性は昨年、こう電話を受け、詐欺グループに指示されるままATMから指定された口座に約87万円を送金した。

 グループはその直後、「うまく手続きができない」「ネットバンキングは開設してますか」と連絡。改めて自宅からネットバンキングで振り込むように求めた。女性は9回にわたり計1050万円を送金したが、区役所職員をかたった人物と連絡が付かなくなり、詐欺と気付いた。

 警視庁によると、23年に東京都内で確認された特殊詐欺被害は2918件(前年比9.3%減)だったが、このうち、ネットバンキングで振り込ませる手口は前年比5倍超の106件に上った。24年も1~3月で36件と、23年を上回るペースで被害が増えている。

 ネットバンキングでの振り込みの場合、ATMや窓口からの送金に比べ、被害が高額化する傾向があるのも特徴だ。1000万円超の高額被害が出た122件を詐取金の受け渡し方法別で見ると、「ネットバンキングでの振り込み」は全体の26%(32件)を占め、38%(46件)だった「現金の手渡し」に次いで多かった。

 捜査関係者は被害額が高額化する理由について「金融機関窓口やATMのように、不審な振り込みをする人に声を掛ける水際の被害防止策が通用せず、繰り返し送金させられてしまう」と指摘。ネットバンキングを日常的に利用する人は多く、今後も同様の手口は増加するとみている。 

出典:Yahoo!(2024/05/11 時事通信)

https://news.yahoo.co.jp/articles/eef8f70b6fc3c46e62a66662f1b0fb0a260b7f85