いきなり電話をかけてきて、不安を煽って金品をだまし取る特殊詐欺。家族になりすますものや警察官、役所の職員、カード会社などをかたるものまで、そのやり口はさまざまだが、もし怪しい電話がかかってきたら、どういった応対法があるのか。実際に特殊詐欺の電話がかかってきたことがあるという人々に、どう対処したかを聞いてみた。

 神奈川県に住む会社員のAさん(30代男性)は、ある日突然、携帯電話に非通知の電話がかかってきた。知人との連絡はSNSを介してすることが多く、電話がかかってくることはほとんどなかったため、非通知の着信があった時点で怪しいと感じたという。

「その電話がかかってきたのは平日の午前中で、出社の準備をしているときでした。携帯に電話がかかってくることもほとんどないのでおかしいなとは思ったんですが、心のどこかで『実家の家族に何かあったのかも』という気持ちもありました」

 Aさんが非通知の電話に出ると、電話の向こうの若い男性が「警視庁の○○です」と話し始めた。

「警視庁と言われた時点で『あ、詐欺だな』と思いました。その男性は『和歌山県警から依頼があり、捜査協力要請が出ています』と言うんですよ。まったく身に覚えがないのはもちろんで、細かい内容を聞いても全然教えてくれない。明らかに怪しいので、私が『いまから録音しますね』と言ったら、電話を切られてしまいました」(Aさん)

 SNS上では、多くのユーザーが同様の手口の電話がかかってきたと投稿しているほか、和歌山県警も公式サイトやSNSでこのような手口の特殊詐欺に対する注意喚起を行っている。

「警察官をかたっている男性の声は若くセリフを読んでいるような雰囲気で、おかしいところがたくさんありました。でも、特殊詐欺というと高齢者がターゲットになるのかと思いきや、30代の携帯電話にもかかってくるんだというのは驚きました。ただ、『録音する』と言った瞬間に切られたので、特殊詐欺対策には『録音』という言葉が有効なのかなと思いました」(Aさん)

ただただ黙っていたら電話を切られた
「銀行口座が不正に利用されている」という内容の電話がかかってきたことがあると話すのは、千葉県に住む無職のBさん(70代女性)だ。

「警察官を名乗る男性が、私の携帯電話にかけてきたんです。何やら私の銀行口座が犯罪に使われている可能性があるとのことで『口座を守るための手続きをする』といったようなことを話していました」

 いきなりの不審な電話に動揺したというBさん。相手の話す内容がよくわからず、上手く対応できなかった。

「口座が犯罪に使われると言われても、何のことかさっぱりわからず、どう答えていいかもわからなかったんです。相手はキャッシュカードの暗証番号を聞き出したかったようなんですが、さすがにそれだけは答えてはいけないということはわかりました。なので、途中から聞かれても返事もせず、ただただ黙っていたら、向こうから電話を切ってきました。

 後日、息子にこんな電話があったと話したら、それが特殊詐欺だということを教えてくれて、やっと理解しました。今後も同様の電話があったら怖いので、息子に頼んで非通知の電話やアドレス帳に登録していない電話は着信を拒否するように、携帯電話の設定をしてもらいました」(Bさん)

様子がおかしいふりをして撃退
 東京都に住む会社員のCさん(40代男性)は、何度か異なる手口の特殊詐欺電話がかかってきたことがあるという。

「どうやら私のスマホの番号が流出しているようで、非通知や知らない番号から、明らかにおかしい電話が何度かかかってきたことがあります。以前利用していた通販サイトで個人情報流出があったので、そこから漏れちゃったのかもしれません」

 明らかに怪しい電話には、まともに対応しないのがいちばんだとCさんは話す。

「最初にかかってきたのは、医療費の還付があるので手続きしてくれという話だったと思います。よくある手口だということは知っていて怪しいとは思いつつも、質問にもちゃんと答えないし、下手なことを話してしまうのもいやだったので、適当に『時間がない』とか言ってこっちから電話を切りました。

 その後、別の日に警察官をかたる電話がかかってきたんですが、それはさすがに詐欺だとすぐに分かりました。広域犯罪の捜査のなかであなたの電話番号が浮上したとか、そんな内容だったと思います。聞いたことがある手口だったので、すぐに切りました」(Cさん)

 さらにCさんは、明らかに“様子がおかしいふり”をして、詐欺電話に対処したこともある。

「なにかの未払金を請求するような内容の電話がかかったてきたこともあります。そのときは詐欺電話にもちょっと慣れて、余裕もありました。だから、何を言われても『あー』とだけ返事をして、対応したんです。向こうもまったく話が通じないと思ったのか、3回目くらいに『あー』と返事をしたら、切られましたね。とにかく話を聞かない、まともに対応しないというのは、有効だと思います」(Cさん)

 さまざまな手口がある特殊詐欺だが、騙されないために重要なのは、怪しい電話がかかってきても、個人情報を話したり、まともに取り合ったりしないこと。説明するまでもないが、警察が非通知で電話をかけてくることはなく、電話でキャッシュカードの暗証番号を聞かれることも絶対にない。自分が被害者にならないために、怪しい電話には冷静に対処したいものだ。(了)

出典:Yahoo!(2024/05/27 マネーポストWEB)

https://news.yahoo.co.jp/articles/f6967ebffc1ea25802a63dde001e47b22d6c74a2?page=2