コンサートやスポーツイベントなどのチケットを高値で転売することを禁じたチケット不正転売禁止法が施行され、14日で1年になった。国内の仲介サイトでの高額転売には歯止めがかかったが、海外サイトやSNSを介したトラブルは、今も後を絶たない。

 一部の業者や個人が高値転売を目的にチケットを買い占め、一般のファンに届かない――。そんな事態を防ごうと、同法は東京五輪も見据え、施行された。

 正規の価格を超える額で転売することを禁じ、違反すれば1年以下の懲役か100万円以下の罰金、もしくはその両方を科す。チケットに転売を禁ずる旨の記載がある▽興行の日時・場所、座席が指定されている▽購入者の氏名や連絡先を確認した――などが条件で、それ以外のチケットは対象外だ。

 警察庁が把握しているところでは、施行後、これまでに8人が摘発(うち逮捕は5人)された。

 初摘発は昨年10月。アイドルグループ「嵐」の公演チケットをSNSで転売したとして、大阪府警が保育士を書類送検した。警視庁は翌月、プロ野球のオールスターゲームと宝塚歌劇団の公演のチケットを仲介サイトで転売したとして都職員を逮捕した。

 国民生活センターによると、ネット上での転売をめぐる相談は増え続けている。統計の公表を始めた2013年度は全国で479件だったが、昨年度は約10倍の4678件に。最近2年間は前年比2倍以上の伸びで、法施行後もトラブルが続いているという。

 昨年度は9~11月にラグビーワールドカップ(W杯)があり、「検索サイトで上位に出たサイトで買ったら海外の転売サイトだった」といった内容の相談が目立った。

 W杯のチケットは不正な転売を防ぐため、公式サイトだけで販売し、購入者には事前に名前や住所などの登録を求めた。用事で観戦できなくなった人は、同じサイトを介して定価で販売する仕組みだったが、海外サイトで高額転売が相次いだ。1次リーグのニュージーランド―南アフリカの強豪対決では、海外サイトを通じた転売やカラーコピーによる偽造などが相次いで判明。約200枚を無効扱いにして入場を断った。

 同様に事前登録した人に抽選販売した東京五輪のチケットをめぐっては、約6900枚(約1億8千万円)が偽の個人情報で購入されたと発覚。大会組織委員会は昨年9月、返金せず無効扱いにすると発表した。組織委は警視庁に相談済みで、海外から組織的にアクセスした可能性があるとみている。