高齢者を狙った特殊詐欺の多発を受け、川崎市は迷惑電話防止機器を2023年度までに2200台、無償で貸し出すことを決定。70歳以上が同居する世帯を対象に、9月から申請を受け付ける。しかし貸出数は対象世帯の1%にとどまり、今後の需要に合わせた対応が求められる。

 自治体職員や警察官を名乗り、キャッシュカードや現金などを狙う特殊詐欺。昨年市内では387件発生し、被害総額は約5億8千万円に上った。特別定額給付金などに乗じた詐欺の発生も懸念されることから、市は迷惑電話防止機器の普及を、4月に掲げた緊急経済対策の中に盛り込んだ。5月の市議会臨時会で今年度補正予算に約680万円を計上。70歳以上が同居する世帯を対象に、2200台を23年度までに無償で貸し出す。

 機器は電話着信時に、通話内容を自動録音する警告メッセージを相手に事前告知することで、犯行を断念させる効果が期待される。

大和市で被害半減

 大和市では、18年10月から機器の購入費用として最大1万円を補助し、19年の特殊詐欺件数が前年に比べ3割減、被害額は半減した。19年度は当初300件の申請を見込んでいたが、想定を上回る511件を交付。今年6月10日までに802件を補助している。同市担当者は「需要が高く、予算を増額対応した。広報誌のほか量販店に説明に出向きチラシ配架するなど、周知に力をいれ被害の縮小につなげられた」と振り返る。

 川崎市が無償で貸し出す2200台は対象世帯の1%にとどまり、その期間も決まっていない。川崎市防犯協会連合会の笠原勝利会長は「事業を始める上で件数そのものは問題ないが、ニーズがあれば増やしてほしい」と話す。

 市では申請を受け付ける予定の9月までに貸し出し期間などを定め、対象世帯へ市の広報や回覧板などで呼びかけていく方針。需要が高ければ数を増やすことも検討していくとし、市担当者は「まずは今年度分の750台を貸し出し、今後に向けて検証したい」としている。