高齢者専門に弁当を宅配するサービス「宅配クック ワン・ツゥ・スリー」は7月から、特殊詐欺の注意喚起チラシを弁当と一緒に配り始めた。神奈川県警によると、弁当を配達する平日の日中は、高齢者が特殊詐欺の被害に遭うことが多い時間帯。普段から顔を合わせ、つながりがある配達員が声かけすることで、被害を未然に防止したい考えだ。【宮島麻実】  1日午後4時半ごろ、相模原市中央区の中照義さん(72)の自宅を宅配クックの配達員、篠崎一生さん(23)が訪れた。この日は弁当だけでなく、特殊詐欺の手口を示したチラシも手渡した。注意を呼びかけると、中さんはチラシを熱心に読んだ。

 中さんは約2年前から同サービスを利用している。篠崎さんとはほぼ毎日会う顔見知りだ。「普段弁当を届けてくれる配達員からチラシをもらい、安心感があった。特殊詐欺などには普段から注意はしているが、一層気をつけようと思う」と話した。

 県警によると、県内の特殊詐欺の認知件数は2015年から毎年増加している。昨年は過去最悪を更新し、2790件だった。今年1~5月に認知された781件のうち、約94%にあたる734件は平日に発生。中でも、午前11時から午後4時59分までの昼の時間帯に約73%の571件が集中している。被害者の9割近くは70歳以上の高齢者だ。

 宅配クックでは配達時、利用する高齢者と対面で声かけをする。昼の分は午前9時~正午、夜の分は午後2~6時に届けている。特に夜の弁当の配達が、特殊詐欺発生が多い時間帯に重なっていることから、県警は運営会社の「シニアライフクリエイト」(東京都港区)に協力を依頼。同社の清水勝経営企画部長は「高齢者の方と直接的なつながりがあるから、今回のような注意喚起もできる。地域貢献の意味も込めて積極的に行っている」という。

 チラシは県内の利用者約8000人に順次配る予定。今後も県警が最新の手口や発生状況などの情報を同社に提供するという。

 配達員も務める宅配クックの相模原中央南店の鈴木一政店長は、普段から配達時には世間話をしたり、体調を気遣う言葉をかけたりして、会話を通じて、利用客の体調が悪くないか、認知症の兆候がないかなどに注意している。ちょっとした変化や異変でも、気づくと家族に連絡をとるようにしているという。「今後は安否確認に加え、『不審な人は来ていませんか』などと声をかけ、特殊詐欺への注意も呼びかけていきたい」と話した。

出典:毎日新聞(2020/7/6)
https://mainichi.jp/articles/20200706/k00/00m/040/008000c