昨年1年間の特殊詐欺の認知件数(暫定値)は1万3526件で、被害総額は277億8000万円に上ったことが警察庁のまとめでわかった。いずれも前年を下回ったが、認知件数は2004年の統計開始以降で最少だった10年(6888件)の2倍で、依然として被害は深刻。新型コロナウイルスの感染拡大に便乗した事件も目立っている。

「オレオレ詐欺」が全体の半数

 

 手口別では、親族や警察官、銀行協会職員などになりすます「オレオレ詐欺」は6382件で、全体の半数近くに上った。高齢者宅を訪れ、封筒に入れさせたキャッシュカードを別のカードとすり替える「キャッシュカード詐欺盗」が約2割(2833件)だった。

 コロナ下で被害が続く背景として、高齢者が外出を自粛しているため詐欺の電話を取る機会が増えたり、現金やカードを取りに来た犯人のマスク姿に違和感を感じなかったりしていることが考えられるという。

新型コロナ「だましの文言」

 

 新型コロナを絡めた「だましの文言」も多い。

 昨年6月、山梨県甲斐市の70歳代の女性宅に長男を装う男から「PCR検査を受けた病院で、会社の小切手をなくした」と電話があった。翌日、「検査も陽性だった。助けて」と現金を無心され、女性は、自宅を訪れた長男の会社の関係者を名乗る男に計1500万円を渡し、だまし取られた。

 警察庁は、感染拡大に伴う給付金や補助金の支給名目で「受け取るには口座を作り直す必要がある」と言ってカードなどを詐取する事件を計55件(未遂含む)確認。被害は計約1億円で、ほかにも、新型コロナに便乗したウソで、現金をだまし取られる被害が各地で相次いでいるという。

 今年も、東京都内では、ワクチン接種の予約金名目で現金を要求する電話が13件あった。都や保健所の職員を名乗り、「高齢者を対象に、PCR検査とワクチン接種の予約を取っている」「予約金10万円を振り込んで」などとウソをついており、警視庁は、詐欺グループがかけたとみている。

 警察幹部は「コロナを悪用して、高齢者らの不安をあおったり、切迫性を感じさせたりする詐欺は、今後も増える恐れがある」と注意を呼びかける。

 

「アポ電」も9万8757件

 

 高齢者の個人情報や資産状況などを聞き出そうとする「アポイントメント電話(アポ電)」も多く、全国で昨年、計9万8757件確認された。その後、詐欺の電話がかかってくるケースのほか、強盗に遭った事件も東京、神奈川、千葉の3都県で11件起きた。

 全国の警察は特殊詐欺の取り締まりを強化しており、昨年、過去最多の7373件(前年比556件増)を摘発し、2658人を逮捕するなどした。注意喚起の広報活動とともに、NTT東日本など大手電話各社の協力を得て、特殊詐欺に使われた固定電話の番号を利用停止にする措置も進めている。

 

「闇バイト」や「裏仕事」も相次ぐ

「闇バイト」や「裏仕事」などと称し、詐欺グループが現金の受け取り役や引き出し役をツイッターで募るケースが相次いでいるため、警察当局は、こうした投稿に警告メッセージを送る取り組みをしている。愛知県警が2019年7月に始め、警視庁や宮城、神奈川、静岡、大阪、福岡など計12都道府県警に広がった。

 警視庁は昨年10月から、担当者4人が毎日、ツイッターを確認。詐欺への加担を誘う投稿を見つけると、「犯罪の実行犯を募集する不適切な書き込みのおそれがあります」と書き込んだり、多くの容疑者が逮捕されていることを示したりしている。

 12月までに約400件を警告し、約85%(約340件)の投稿が削除された。警視庁幹部は「コロナ禍で職を失った若者が、ツイッターをきっかけに詐欺に手を染める事件もある。警告によって、何とか思いとどまらせたい」と語った。

出典:読売新聞(2021/2/4)
https://www.yomiuri.co.jp/national/20210204-OYT1T50136/