2021年2月4日、兵庫県警たつの署は5億円の「当選詐欺」に騙されそうになった70代の高齢女性を説得して踏みとどまらせたということで、県信用組合新宮支店に感謝状を贈りました。当選詐欺とは、当選通知を装ったメールなどで相手を騙し、プレゼントや当選金を受け取るための手続きと称して、送金させたり個人情報を盗む手口になります。
女性が同店の時間外窓口に訪れたのは、1月8日午後5時ごろ。用件はスマートフォンに届いたメールに関するものでしたが、「5億円当選おめでとうございます!」と書かれたメッセージは、事務手数料として電子マネー2000円分の購入を要求する内容になっていました。
当選詐欺のことを知っているなら、詐欺だとすぐに判断できるのですが、この女性は信じてしまったようです。内容を確認した同組合の次長と支店長は電子マネーを購入しないように説得しましたが、女性はなかなか聞き入れなかったようです。 メールを見てから来店するまで、どれほど将来の想像を膨らませたことでしょう。結局、警察に連絡して駆けつけた署員2人とも一緒に説得したそうです。最終的には踏みとどまらせたようですが、コンビニで電子マネーをすぐに購入できる人であれば発覚しなかった可能性があります。
実は、このようなケースは珍しくありません。
2020年6月、たつの署管轄地域にある信用金庫では同様のことが起こりました。3億円の宝くじが当たり、預り金として2万円を振り込む必要があると、60代の男性がスマートフォンの画面を見せてきました。信用金庫の職員は詐欺だと判断して説得したのですが、男性は納得せず、自宅に届いたという「50億円当選」と書かれた郵便物を持ってきたそうです。このときも警察と一緒に説得して入金を思いとどまらせました。
インターネットに慣れていない高齢者にとっては、偽の当選通知が来ても、その内容を疑うことなく信じ込んでしまう人もいます。そのため、銀行やコンビニの店員に諭されても、「私が大金を得ようとしているのを邪魔しているのではないか」と考えることもあります。もしくは、「詐欺の可能性もあるけど、もしかしたら本当かもしれない」と一縷の望みを捨てきれないのです。
被害を止められなかったケースもあります。2020年10月、沖縄の60代の男性は「38億円が当選した」という内容のメールを受け取ります。当選金を保証するための費用として電子マネーの購入を要求する内容になっているのですが、引っ掛かれば繰り返し要求されてしまいます。結局、この男性は231回にわたり、合計1101万8000円相当の電子マネーを購入してしまいました。
何も買っていないのに何億円も当選するなんてことはありません。この手の被害を防ぐには、事例を知ることが最も効果があります。皆さんのご両親とコミュニケーションを取り、こんな事例があるということを共有してみてください。自分だったら信じない、と笑い話にするのもありです。手口が陳腐化すればするほど、高齢者が騙される可能性が低くなります。ぜひ、周りの方にも記事をシェアしてきちんとしたデジタルリテラシーを身に付けましょう。
NPO法人DLIS(デジタルリテラシー向上機構) 高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「support@dlis.info」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。
出典:yahooニュース(2021/2/19)
https://news.yahoo.co.jp/articles/961fe3e3a7c187b86c89771185ae1407f07802ae