ドラッグストア2店舗の店員3人が連携して詐欺被害を食い止め、茨城県警日立署に表彰された。詐欺だと直感した店員が、客が立ち去った後に、近隣店舗と情報共有したことが奏功。中山文雄署長は「機転を利かせた情報共有によって被害が防げた。意識の高さに感謝したい」とたたえた。

 事案があったのは7月27日。午前11時半ごろ、日立市の「ウエルシア日立田尻店」に、高齢の女性の声で「ビットキャッシュカードは売っていますか。30万円分買いたい」と電話があった。ビットキャッシュは電子マネーの一種で、カードに固有の番号が書かれており、番号がわかれば、他人が使うこともできる。

 電話を受けた根本育実さん(25)が「高齢者で、しかも一度に30万円も買うのはおかしい」と、先輩の吉田真美さん(49)に相談していると、5分ほどで高齢女性がタクシーで来店。口ぶりは穏やかだったが、耳が赤く焦っている様子だった。購入理由を聞いても「早く買って帰りたい」の一点張り。詐欺だと思った吉田さんは「額が額なのでお売りできません」と断り110番通報したが、女性は署員が着く前に店を出た。

 「他の店に行くかも」と思った2人は、隣接するウエルシアの2店舗に電話で情報を伝え、注意を求めた。午後1時50分ごろ、女性は日立小木津店に。レジ係の川上千波さん(51)は、使い道を聞くと女性が「息子のため」と答えたため、詐欺だと確信した。

 店長や駆けつけた署員が話を聞いたところ、長男の上司を名乗る男から電話で「長男ががんで手術をするので、漢方代として電子マネーを30万円分購入してほしい。ウエルシアで買える」と言われたという。女性は、署員が詐欺だと伝えても、まだ信じ切っていたという。

 感謝状を受け取った川上さんは「情報を聞いていたからこそ対応できた」と振り返った。根本さんは「被害に遭いそうな方をとにかく助けたいという思いだった」。吉田さんは「今後も連携を取り、地域の皆様の安全を守りたい」と話した。

出典:朝日新聞(2020/9/11)
https://www.asahi.com/articles/ASN9B766NN8PUJHB00L.html