福岡県内35警察署管内で今年、最も深刻な特殊詐欺の被害が出ている福岡市早良、城南両区を管轄する早良署は12日、被害防止策を強化する「ニセ電話詐欺被害ゼロ作戦」を始めた。同署ではこの日、被害に遭いかけた福岡市早良区の女性(88)が報道各社の取材に応じ「電話がかかってきた時は動揺し、信じ切っていた」と当時の心境を明かした。【大坪菜々美】

知人駆け付け若い男逃走

 女性宅の固定電話に地銀の店長を名乗る男性から「通帳の切り替えをしている。担当者に通帳を渡して」と連絡があったのは9月26日。同行に口座を持っている女性は堂々とした声にだまされ、指示されるまま覚えている範囲で暗証番号や残高を教えた。

 一方で、不審に感じる点もあった。女性が通帳を届けるため「タクシーで支店に向かう」と言うと、男性は「近くにいる若い者がそちらに行く」とかたくなに取り合わなかった。不安になった女性は近所の知人女性(75)に助けを求めた。

 自宅に来た若い男性に身分証明書の提示を求めると「ない」と言われ、女性は詐欺だと確信した。ちょうどその時、知人女性が到着し、声をかけると若い男性は何も言わず走って逃げたという。女性は「自分が被害に遭うとは思わなかった」と振り返った。

 県警によると、県内では今年、特殊詐欺が8月末までに138件発生し、被害額は計2億4629万円に上った。早良署管内では21件発生し、計3864万円の被害が出た。同署は「ゼロ作戦」の取り組みとして、被害が多発している地域で戸別訪問を実施し、手口の周知などに努める。

出典:毎日新聞(2020/10/14)
https://mainichi.jp/articles/20201014/k00/00m/040/012000c