岡山県警が昨年県内で発生した特殊詐欺事件を発端に、全国規模の詐欺グループの摘発を進めている。通常、グループは役割が細分化され、上層部まで捜査できるケースは少ないが、中心人物の逮捕や拠点の特定など、組織の実態解明に迫っている。(上万俊弥)
昨年の事件が端緒
県警捜査2課によると、端緒になったのは昨年3月の詐欺事件。岡山市の高齢女性が詐欺グループに電話で「あなたの口座が使われ、勝手に高額商品が購入された」などとだまされ、訪れた男がキャッシュカードを詐取。現金100万円を引き出される被害を受けた。
女性から通報を受けた県警は、防犯カメラ映像などからカードをだまし取ったとして広島市の建設作業員の少年(19)を詐欺容疑で逮捕(少年院送致)。これを契機に組織中枢への「突き上げ捜査」が始まった。
特殊詐欺組織は、役割が細かく決まっているのが一般的だ。カードや現金を受け取る「受け子」▽現金自動預け払い機(ATM)から引き出す「出し子」▽電話をかける「かけ子」▽受け子を募る「リクルーター」などが、それぞれを分担。被害者宅や金融機関などに実際に赴く受け子や出し子は逮捕されやすく「トカゲのしっぽ切り」に使われ、組織上層部の情報を知らないことが多い。
建設作業員の少年は受け子で、グループの全容は把握していなかった。だが、交友関係などを調べた結果、共犯として、広島県安芸高田市の無職の少年(19)が浮上、同容疑で逮捕(同)した。
その後、少年らが連絡に使っていたSNSの解析や供述などに基づき、リクルーター役として山口県の建設作業員の男ら2人を同容疑で逮捕。さらにグループが福井県での詐欺事件にも関与していることがわかると、福井県警と合同捜査を開始。12月、受け子の元締とみられる山梨県の貴金属小売業の男(38)も、同容疑での逮捕に至った。
また、受け子の元締とみられる男の捜査の過程で、東京都内のマンションが関係先として浮上。県警は組織が被害者に電話をかける拠点「かけ場」であることを突き止め、和歌山県や千葉県などの詐欺事件に関わったとして「かけ子」役の神奈川県のデザイナーの男(37)ら3人を詐欺容疑で逮捕(詐欺罪で起訴)した。捜査を指揮する河合俊雄・同課次長兼特殊詐欺事件捜査室長は、「かけ場まで踏み込めたのは非常に珍しい。地道な捜査が実った」と語る。
これまでに摘発したのは10人以上で、県警は現時点でグループの最上位は元締役とされる男とみている。さらに上部には暴力団がいる可能性もあるといい、河合室長は「新たな被害を生まないためにも、捜査を尽くし全容解明を進めたい」としている。
出典:yahooニュース(2021/3/7)
https://news.yahoo.co.jp/articles/43cbcb508fc2744ac11631724f383e159d6fa26d