【山梨】振り込め詐欺の被害をなくすため、県警は今月から、着信時に音声を自動で流して詐欺を防ぐ機器の貸し出しを始めた。これまで不審電話を受けたり電話詐欺の被害にあったりしたお年寄りに貸し出す。今年に入り、県内では総額約8900万円の被害があり、県警は危機感を強めている。

 製品名は「振込め詐欺見張隊新117(ふりこめさぎみはりたいしんいいな)」。縦15センチ、横10センチ、厚さ3センチの箱を電話機につないで使う。電話がかかってくると、「振り込め詐欺などの犯罪被害防止のため、会話内容が自動録音されます」と相手側にアナウンスが流れる。犯人ならば、その間に電話を切る可能性が高いという。

 実際、60時間分まで録音できる。会話中に機器を操作することで着信拒否の番号として登録もできる。非通知からの電話には通知してからかけ直すよう求める音声が流れたり、着信を拒否したりもできる。泥棒が侵入したり、体調が悪かったりした時に赤いボタンを押せば、「緊急事態発生」と、あらかじめ登録していた電話に連絡がいく。

 貸出期間は原則1年。85台を県内の各署に配った。捜査で押収した名簿に名前が載っていたお年寄りや、過去に被害にあった人などを対象にする。

 県内の振り込め詐欺の被害は、2018年には62件で、被害総額は1億2861万円。20年は71件で1億5916万円だった。今年5月末現在では、31件の被害があり、総被害額は8849万円。一度に4千万円をだまし取られた人もいる。山梨は都心に近いこともあって、小さい県としては被害額も多いという。

 振り込め詐欺は、固定電話に番号非通知でかかってきたケースが大半で、電話に出なければ被害に遭わない。録音は証拠としても利用できるという。県警生活安全企画課の担当者は「防犯力をつけ、被害を未然に防いで欲しい」としている。(平山亜理)

出典:朝日新聞デジタル(2021/6/4)
https://www.asahi.com/articles/ASP637QW2P63UZOB00D.html