「だまされたふりをしてくれませんか」――。警察官をかたって被害者に捜査協力を持ちかけ、お金をだまし取る新たな特殊詐欺が、福島県内で相次いで確認されている。正義感につけ込んで誘導する巧妙な手口。県警は「実際にお金を振り込むようお願いすることは絶対にない」と注意を呼びかけている。

 県警生活安全企画課によると、県内では8月頃から「だまされたふり作戦」を悪用した手口が確認されるようになった。

 犯人はまず、警察官を装って被害者に連絡し、特殊詐欺の電話があったら「コールセンター」に電話するよう依頼。息子や孫をかたるオレオレ詐欺の電話をかけ、コールセンターに連絡させる。そして、捜査に協力するよう仕向けて、実際にお金を振り込ませるという。

 9月には福島市の80歳代女性が約200万円を送金し、10月中旬には郡山市の80歳代女性が複数回にわたって約2500万円をだまし取られた。ほかにも3件の未遂事件が発生しているほか、コールセンターへの「通報」を呼びかける予兆電話も増えている。

 同課は「捜査協力をお願いすることはあるが、普通は警察官が直接訪問し、警察手帳を見せてお願いする。少しでも異変を感じたら警察に相談してほしい」としている。

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 同課によると、今年10月末までに県内で認知された特殊詐欺の件数は84件(前年同期比23件減)、被害額は1億3847万円(同3889万円減)と減少している。ただ、手口別ではオレオレ詐欺は22件(同17件増)で被害額4492万円(同4017万円増)、還付金詐欺は22件(同13件増)で被害額2138万円(同1005万円増)と増加。二つの手口で全体の47・8%を占め、前年同期の9%から大きく伸びている。

 同課は「コロナ禍で非接触型の還付金詐欺や長期間会っていない息子や孫をかたるオレオレ詐欺が増えている可能性がある」と分析。昨年10~12月には、昨年全体の3割超にあたる44件の特殊詐欺被害が発生しており、県警は年末年始にかけて事件事故防止活動を強化するという。

 県警生活安全部の冨塚法雄部長は「帰省などで家族が集まった際に、詐欺を話題に取り上げたり、家族間の合言葉を決めたりするなど、被害に遭わない絆作りをお願いしたい」と話した。

出典:Yahooニュース(2021/11/26 読売新聞オンライン)
https://news.yahoo.co.jp/articles/777e4d5da26fbd3a6ba845d89dbbb0dbab69dc40