親族らをかたる「おれおれ詐欺」などの特殊詐欺事件で、固定電話に詐欺グループから連絡を受け、被害に遭うケースが後を絶たない。携帯電話と違い、番号表示機能を備えていない電話機を使っていたケースが多いとみられ、県警が警戒を呼び掛けている。
白石市の無職女性(69)の自宅に4月29日、警察官を名乗る男から「キャッシュカード番号を変える必要がある」などと電話があった。固定電話で通話中に別の男が訪れ、女性はカード5枚を入れた封筒をすり替えられて盗まれ、その日のうちに現金約330万円を引き出された。
県内で1~4月、現金やキャッシュカードをだまし取ったり、すり替えて盗んだりする手口の特殊詐欺事件の被害が53件あった。白石市の例をはじめ、詐欺グループは全て固定電話に連絡していた。
捜査関係者によると、詐欺グループはさまざまな名簿を使い、主に高齢者が使う固定電話を狙ってかけているとみられる。
最近は被害者と電話をつないだまま、カードなどを受け取る「受け子」を被害者の自宅に向かわせる手口が目立つ。通話中にカードなどをすり替え、通報を遅らせる狙いがあるようだ。
県警生活安全企画課の土屋忠洋犯罪抑止対策官は「見覚えのない番号からの電話に出てしまい、言葉巧みにだまされてしまうケースが多い。留守番電話機能を付けるなど犯人と会話しない対策が必要だ」と指摘する。
◎警察、家電量販店と連携し普及図る
特殊詐欺など固定電話への連絡を基にした犯罪被害を減らそうと、家電メーカーは録音や警告機能のある電話機を販売している。全国防犯協会連合会(東京)が2017年に認定制度を設け、20年5月現在で固定電話機を中心に9社計37機種を登録している。
代表的な機種は通話時にまず「防犯のため録音されます。名前をおっしゃってください」といった案内が流れる。相手が名乗るまで着信音は鳴らず、受け手は確認して電話に出るか、拒否するかを選べる。番号を通知しない場合は自動的に拒否できる。
民間の迷惑番号データベースと連携したり、電話帳を照合したりして、画面の色や音声で警告する機能を備えた電話機もある。
普及に向け、県警は昨年9月、東北を中心に家電量販店ケーズデンキを運営するデンコードー(名取市)と連携協定を結んだ。東仙台店の相馬孝博店長(45)は「高齢者を守るのは地域の店の使命。選び方、使い方で迷ったら相談してほしい」と話す。
対応機種の販売価格は、おおむね6000円台~約3万円。番号表示などの申し込みや月額料金が別に必要となるものもある。
出典:河北新報(2020/5/31)
https://www.kahoku.co.jp/tohokunews/202006/20200601_73021.html