注文した覚えのない種子が中国から郵便などで届く事例が続発し、全国の消費生活センターや農林水産省植物防疫所に多数の相談が寄せられていることが3日、分かった。植物防疫所は「付着した細菌や病害虫が、他の植物に害を与える可能性もあるので絶対に栽培しないで」と注意を呼び掛けている。
神奈川県三浦市によると7月30日、市内の60代男性から「不審なものが届いた」と封筒が持ち込まれた。封筒は約15センチ四方で、中のポリ袋に茶色の種子が約100粒入っていた。植物防疫所に持ち込まれた種子はネギ属。植物を国際郵便で輸入する際に、植物防疫官が押す合格証印もなかった。送り元は「中国広東省深セン」、名目には「宝石」といずれも英語で書かれ、差出人の名前はなかった。
東海地方の60代女性も7月、中国から妹宛てに2日連続で郵便物が届き、消費生活センターに相談した。いずれも中身は種子で、名目は「リング」と書かれていた。
SNS上には、種子が届いた人たちが「気持ち悪い」「怖い」「何のために」と不安の声とともに、種子や中国語などの書かれた封筒の画像を投稿。米国などでも同様の例が1000件以上報告され、米農務省の調べではアサガオやキャベツなど、少なくとも14種類の種子が確認された。
送り主の目的は不明だが、国民生活センターの担当者は、相手の同意なく送付して金銭を要求する「送りつけ商法」や「ブラッシング詐欺」の可能性を指摘している。
ブラッシング詐欺は、通販サイトで出品者が注文件数を増やし、高評価を得るために行うオンライン詐欺の一つ。相手の同意なしに勝手に商品を送りつけ、受取人を装って通販サイトに高評価のレビューを書き込む手法だ。高評価を得ると、出品者は信頼度が上がり、その後の取引がやりやすくなる。
このほか、封筒などに個別のバーコードが印字されていることから「種が届いた人が、バーコードが映り込んだ画像をSNSに投稿することを見越し、アカウントと住所など個人情報のひも付けを狙っているのではないか」との指摘もある。
検査されていない海外の種子の保管は植物防疫法違反に問われる恐れがあり、植物防疫所は最寄りの防疫センターや事務所への相談を勧めている。
出典:スポーツニッポン新聞社(2020/8/4)
https://www.sponichi.co.jp/society/news/2020/08/04/kiji/20200803s00042000436000c.html