「医療費が戻ってくる」などとうそを言って高齢者らから現金をだまし取る還付金詐欺の被害が急増している。この詐欺は現金自動受払機(ATM)の操作方法を犯人が携帯電話で指示することに特徴があり、警視庁はその手口に着目した対策に乗り出している。
昨年10月、警視庁が東京都内5カ所の無人ATMに設置したのは、微弱な電波を発して携帯電話の通話を遮断する装置だった。通話そのものをできなくさせることで、犯人と被害者との連絡を絶つのが狙いだ。警察による設置は全国初という。
実際、この装置で被害を防いだ例も複数出ている。今年7月には70代女性が詐欺グループから現金を振り込むよう指示されたが、ATMコーナーでは携帯電話がつながらず、コーナーを出たり入ったりしていた。この様子を不審に思った通行人が110番し、被害を免れたという。設置費用に加え、1カ所あたりの年間運営費(約100万円)は同庁が全額負担する。コストはかかるが、設置箇所の拡大も検討している。
ハード面だけでなく、ソフト面での対策も進める。6月には全国銀行協会や日本フランチャイズチェーン協会と共同で「ストップ!ATMでの携帯電話」のキャンペーンを開始。都内約1万3500カ所のATMコーナーでポスターを掲示するほか、ATM操作中に通話している利用者への声掛けを徹底するよう呼びかけている。
警視庁犯罪抑止対策本部の高崎光管理官は「コロナ禍の経済対策で国から現金が振り込まれるケースが多くなり、還付金詐欺が増えた可能性がある」と指摘。「病院などと同様、ATM付近でも通話しないという認識が浸透するよう周知を図る」と話す。
警察庁の3日の発表によると、今年上半期(1~6月)に全国の警察が認知した還付金詐欺は前年同期比2・3倍の1733件(暫定値)で、被害額は9割増の19・7億円だった。還付金詐欺を含む特殊詐欺全体は同0・5%減の6840件。このうち新型コロナウイルスに関連した特殊詐欺は29件あったが、そのうち還付金詐欺が21件を占めた。【安達恒太郎、町田徳丈】
出典:Yahooニュース(2021/8/3 毎日新聞)https://news.yahoo.co.jp/articles/fc5099ca96a31d7d35b3cf170fd8be1cf334176c